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SLTA「口頭命令に従う」から見えた ― 文理解を左右する3つの力 ―

失語症の方の「文の聴理解」は、私たちSTにとって評価と訓練の両面でとても重要なテーマです!

なかでも、標準化検査としてよく用いられる SLTA(標準失語症検査)「口頭命令に従う」 は、

単語理解を超えて、構文・助詞・記憶など複数の要素が関わる複雑な課題です。


今回は、山﨑勝也先生らによる研究

「文の聴理解に影響を及ぼす因子について ―SLTA『口頭命令に従う』の分析を通して―」(高次脳機能研究, 2014)をもとに、

この課題を難しくしている“3つの因子”を整理しました。


① 連続的理解 ― 情報を“流れで処理する力”


この研究では、短期記憶の量よりも

**情報を「流れで処理する力(連続的理解)」**が重要であることが示されています。


単語単位で覚える力よりも、

文全体を意味のつながりとして処理する力が、理解のカギとなります。


これは臨床でもよく見られる現象で、

単語は理解できても“長い指示文になると混乱してしまう”ケースに通じます。


② 助詞「の」の理解 ― 抽象的な関係性の処理


助詞理解の分析では、

「で」よりも**「の」**の理解が難しいことが示されました。


助詞「の」は名詞と名詞を抽象的に結びつけるため、

文構造や意味関係の理解をより深く求められます。


例えば「机の上のノートを取ってください」という文では、

空間的・文法的な関係を同時に処理する必要があり、

失語症の方にとっては高い認知負荷がかかります。


③ 構文処理+記憶の統合 ― 聴理解を支えるメカニズム


さらに、構文処理(文の構造を捉える力)と記憶の統合も重要です。

「聞く」「覚える」「構造を組み立てる」という3つの過程を同時に行うことで、

初めて意味のある文として理解が成立します。


この“統合の力”が弱いと、

単語やフレーズは分かっていても全体の文意がとらえにくくなります。


💡まとめ ― 文理解には“流れで理解する力”がカギ


この研究からわかるのは、

「口頭命令に従う」の正答率を左右するのは単なる記憶力ではなく、

連続的に情報を処理し、助詞や構文を統合して理解する力だということです。


臨床では、評価の際に単語理解だけでなく、

「文をどのような流れで処理しているか」に注目することで、

より実態に近い聴理解の特徴をとらえやすくなります。


📚 参考文献

山﨑勝也・関野とも子・古木忍(2014)

文の聴理解に影響を及ぼす因子について ―SLTA「口頭命令に従う」の分析を通して―

高次脳機能研究, 34(3), 350–362.


💬 STudyLabo編集部より

来週の講座では、この研究をもとに

“聴理解から訓練立案につなげる視点”を取り上げます。

評価と実践をどう結びつけるか、現場でのヒントを一緒に探っていきましょう🩵

来週の講座はこちら🔽

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